HRプロフェッショナルの平均仕事量が増加するにつれ、仕事で成功することと、家族や個人的な活動のバランスを取ることがどんどん難しくなっています。さらに、毎日24時間繋がっている状態になる技術の発展に従い、私たちは携帯電話でeメールを読んだり返事をしたりと今まで以上に時間を費やしています。そして、世界中で、各企業がフレックスタイム、自宅勤務、「ノー残業」方針などを打ち出している状況があります。

2015年9月、ChapmanCGは、日本のHR業界が現在直面している課題を話し合う会合を2回共催しました。最初の会合はBPの東京大崎の会議室で開催され、柔軟な働き方を実現する上で上がってくる課題について話し合われ、製造業、IT&T、小売業界、サービス業界、そしてヘルスケアなど様々な業界の日本人と外国人の優秀なHRリーダーに出席いただきました。

会議で明らかになったのは、大多数の組織がこの問題を大変重要視し、それぞれの状況に応じた問題に対して多くの解決策がありえるということです。この取り組みを全社に渡って推進していくためには、多額の予算が必要なことはあまりなく、それよりもHRが経営陣と協力していく必要があるということが共通した意見でした。上級管理職が「模範を示す」をということが最終的に組織の姿勢および文化に変化をもたらすということは、下記の詳細や主要点からも明らかです。

null

模範を示す

ある日本のメーカーは、11:00から15:00の間は勤務する必要な「コアタイム」のあるフレックスタイムを導入しました。フレックスタイムをとるのに管理職の許可を取る必要はありません。また、HRは、模範となるために毎日ではないにしろ、17:00には帰宅するようにしました。この制度は、保育園に子供を迎えに行かなければならない働くお母さんにとって大変有意義なものとなりましたが、保守的な管理職の中には、部下の「管理ができない」あるいは、必要な時に席にいない状態になったと感じる人もいました。

グローバルヘルスケア企業は、様々なコミュニケーションツールを通して、従業員が様々な働き方を選べるという最近の取り組みについて発表してくださいました。この取り組みは、最初からうまくいったわけではなく、HRは社長に協力を依頼しました。社長は、自分の成功例を組織と共有し、リーダーたちが生産性と柔軟性のバランスをとるよう提言しました。また、すべての社員に、自分の仕事とプライベートで向上させること何か1つを宣言しようと提案しました。それは休暇を予約することでも、1週間に1回早く帰宅することでも、不要なプロセスを削減することでも、何でも良いということでした。さらに、毎日同じ時間にオフィス全体の電気をつけたり消したりして、社員に働き方を見直すシンボルとしました。現在のところまだ浸透中という段階とはいえ、社員の姿勢に変化がみられるとのことで、トップダウンでメッセージを伝えることの大切さを表しているのではないでしょうか。

インプットとアウトプットの綱引き

別の日本のメーカーは、多くの人がアウトプットよりもインプットの方が重要だと考えていることが一番の問題なのだと言っていました。柔軟性のある働き方は、管理職がいまだに結果よりも長時間働く方が大切だと考えているうちは実現しません。この傾向を変えるため、このメーカーのHRは、この取り組みの効果と効率を上げるための10の新アイデアを提案するという、優勝者に海外旅行が授与されるコンテストを実施しました。

あるグローバルIT企業は、全員にラップトップが支給され、毎日違うデスクで仕事をするというモバイルデスク制度を採用し、社内の風通しを良くしようとしました。その結果、多少の移動はあったものの、社員の多くは相変わらず仲間で集まる傾向にあるそうです。また、この会社のITセールスプロフェッショナルや技術者の多くは、必要のある場合は一昼夜を通して働くこともあるので、「コアタイム」なしのフレックスタイム制になっています。新入社員などに比べて、年齢の高い社員の方がこれらの制度に馴染まない傾向があるそうです。

会合で明らかになったのは、職場の柔軟性を実現する取り組みにおいて最も大きな課題は、取り組みを考案すること自体以前に、社員の賛同を得る難しさにあるということです。「アウトプットよりもインプット」から「インプットよりもアウトプット」に考え方を変えていかなければ、HRは、永遠に負け戦を強いられることになるでしょう。

金銭的報奨によらずして意欲を高める

2回目の会合は、同じく東京の大崎地区において、通信機器企業Alcatel-Lucentとの共催で、社員のエンゲージメント(主体的貢献)について、特に金銭的報奨によることなくエンゲージメントを高めることに関して話し合われました。トップの人材に関する求人市場はさらに競争が激しくなり、雇用側と被雇用側の力のバランスが逆転しています。今日の労働者は、もはや今までのように給与や手当、終身雇用を重要視していません。高い目標、展望、ワークライフバランスを求めているのです。以下は、社員のエンゲージメントを高める創造的な方法に関する話し合いの総括です。会合には、日本のIT、消費財、製薬、保険および金融業界の代表的な企業の方々が参加されました。

null

報奨金の価値の低下

あるグローバルIT企業は、社員のエンゲージメントを向上させる取り組みで直面した困難な状況について発表してくれました。その理由の一部として、年間報奨コストの増加を抑制する必要もありました。その企業は以前、リージョンの社長が授与する報奨金で社員に報い、意欲を向上しようとしていました。さらに、チームでの会食の機会を設けることで協力関係を向上させようともしました。当初、良い効果をあげていたのですが、これらの取り組みが当たり前となるにつれ、エンゲージメントにいかなる効果も与えなくなりました。別のグローバルITサービス企業は、「スポット報奨」について発表してくれました。特別な貢献が発生するたびに報奨するという制度で、成果と報奨の間に時間をおかないことで、かなり効果的であることが証明されました。この取り組みでは、各マネージャーが月に2回、報奨金を与える権限を持っていました。ただし、問題としては、遠隔地の社員のエンゲージメントを上げるのが難しいという点が挙げられ、綿密なコミュニケーションが重要であるとのことでした。さらに、別のグローバルメーカーの方が、次のいくつかの理由で、典型的な日本人社員は報奨されることが少ないということを指摘されていました。それは日本人が「自画自賛」しない傾向があるということや、上司が海外にいるということです。

報奨金に取って代わるもの

  • ソーシャルネットワーク: ある製薬会社は、ソーシャルエンタープライズネットワークYammerを使用して社員のエンゲージメント向上を試みましたが、限定的な効果に留まりました。このアプリを喜んで使用した社員もいましたが、コミュニケーションの量に嫌気がさすと感じる人もいたのです。また、メッセージが英語であったため、日本人社員は無視する人が多かったとのことです。
  • ファミリーイベント: 別の会社は、今ではクラシックとも言える「ファミリーイベント」を活用しました。社員、その配偶者や子供たちが参加するピクニックやボーリングなどの行事を催したのです。この取り組みは、特に単身赴任している社員に効果的ですが、東京のような本社のある地域でも効果が期待できると思われます。
  • 福利厚生・給付説明会: ある保険会社では、毎月、社員の福利厚生・給付に関する特定のトピック、たとえば、健康などにテーマを絞った説明会が催されています。この会社は、社員の受け取る情報が多すぎるため、逆にどのような福利厚生・給付を受けることができるのかよくわかっていない人が多いということを発見しました。これらの説明会では、社員が年間に利用することのできるプログラムについて説明を受けることができるのです。この取り組みはお金のかかるものではありませんので、つまりは、お金をかけることなくエンゲージメントを向上することができるということになります。
  • 社員エンゲージメント調査: 会合では、社員の参加意識を高めるもう一つの重要なツールに、エンゲージメント調査があることに意見が一致しました。この調査により、各社員は自分の意見を経営陣が重要視していると感じることができ、これを上手に活用することにより、エンゲージメントを作り出すことができます。この調査は、毎年行う必要はなく、2年に1回がベストであることも指摘されました。1年目は、必然的に結果の分析であり、2年目は変革の実施になります。また変革の必要な分野について指摘した人を関与させることが解決法を見つける上で助けになることも挙げられました。
  • 結論

    報奨金の授与は、短期にしか意欲を向上させないことは明らかです。長期にわたるエンゲージメントには、オープンなコミュニケーション、つまり社員が自分の意見を聞いてもらえると感じることが必要です。社交的な催し、ITコミュニケーションツール、満足度調査などで社員の心をつかむことにより、離職者の軽減、意欲の向上、生産性の向上を得ることができます。もちろん、これらすべては言うは易すし行うは難たしではあります。エンゲージメントは一夜にして得られるものではありません。よって、長期的な戦略と取り組みが必須であり、プロセスの途中における早すぎる中止は、マイナスの効果を与えかねません。

    この2回の価値ある会合を共に主催していただいたBPおよびAlcatel-Lucentに感謝を申し上げます。2016年初頭に、日本におけるHR市場の現状について話し合う交流会で再びお会いできることを楽しみにしております。

    ご感想:

    「このようなすばらしい交流会を開催させていただき、ありがとうございます。貴重な意見交換をさせていただきました。私たちはそれぞれの事業で共通の課題に直面しており、業界の垣根を越えてネットワークを築き、互いに学ぶことがますます大切になってきていると思います」‐Yasko Nagahama, BP

    「わたしたちは、機動的な働き方について、共通の課題を抱えています。これは、どこで働くかという問題ではなく、どのように働くかということだと思います。どこにいようとも高品質な成果を挙げる責任をもつ自分になるために一歩を踏み出すということです。」-Reiko Teshiba, L'Oreal

    「個人的に、物事の変化の激しさに衝撃を受けました。時流に遅れることなく、さらにはその前を行く必要性を強く感じました。」-Akira Endo, DHL Express

    「すばらしい交流会でした!仕事環境の柔軟性を変えていくには、業績、生産性、そしてチーム/個人の成果と結びついていなくてはならないと感じました。」-Mikiko Okada, General Electric

    「OscarとYan Senが組織する交流会はHR業務において市場で何が起きているかを知り、新たなアイデアを得るすばらしい機会になっています。貴重な意見交換のできる参加者の組み合わせも理想的です。」-Alejandro Casado Revilla, LIXIL

    「HRリーダーにとって、他社の最新のベストプラクティスについて情報を得て、新鮮なネットワークを構築することは、業務における洞察力を強化するために重要なことです。この交流会は、まさにそのような機会です!」-Yoshihito Kishida, Alcon

    「他のHR担当者にお会いし、意見を交換でき、すばらしい会合でした。」-Tim McIntosh, MasterCard